秋葉原のPCNETで500円でごろごろしていたシンクライアント。
同じ値段で、5インチベイに収まりそうなサイズの箱型のものと、ブロードバンドルーターのような薄型のものがあった。どっちも中を見られるように開けたものがあったが、見るとどちらもGeodeLXくさい。ただ、箱型の方はIDEの2.5インチHDDが入る、薄型の方はコンパクトフラッシュのスロットがあってそれをストレージにするっぽかった。
それで薄型の方を買ってみたところ、Nexterm RT-500というものだった。
プラスチックの外装はネジどめなのですぐ外せるが、中はステンレス板で囲われていて、これははめ殺しのようだ。とはいえ、ステンレス板を剥がしたところで、アクセスできる機器はボタン電池だけのよう。
コンパクトフラッシュは、プラ外装を外せばアクセスできる。多分IDE互換モードだと思うので、認識できる容量とかはあまり気にしなくてよかろうと思う。16GBは問題なし。
電源は、19V 3.33AのACアダプターがついてきた。こんなに消費しない気がするけれども、純正かどうかは不明。コネクタは普通の丸ピン。
100Mbpsの有線LANポート、USBが4つ、アナログRGB、RS-232C、マイク・ヘッドホン端子が背面にある。
メモリーは、DDR-SDRAMがオンボード実装されていて、512MB。増やせない。
だいぶ前に工人舎のSA5Kを買って使っていたので、GeodeLXの性能はもう知ってるといえば知ってるけれど。
CPUは、源流をたどるとCyrixに行き当たる。90年代半ばに、Cx5x86 (Pentium世代のアーキテクチャでi486互換のパッケージにした互換CPU)のCPUコア・メモリーコントローラー・グラフィック・サウンドをひとつにまとめた、MediaGXという製品が源流。性能は低いが、低価格で簡単にPCを仕立てられるので、激安PC向けにそこそこ売れた。
Cyrixはナショナルセミコンダクターに買収され、MediaGXもNSの製品になりつつ、MMXに対応して200MHz級のクロックになったMediaGXmに改良される。
そして、先進的なCPUを開発してIntelとケンカするのは無理だと、CPU部門はVIAに切り売りされる。しかしMediaGXmは残って引き続き売られ、3DNow!に対応したり低消費電力化が進みつつ、製品名が変わってGeodeGXとなる。
それで、組み込み用の超低消費電力のx86 CPU(SoC)を求めたAMDが、ナショナルセミコンダクターからGeodeを買収。クロックも2倍くらい上がり、プロセスルールも0.13μまで微細化(IntelではTualatinやNorthwoodが0.13μ)されたGeodeLXがリリースされた。
そういう流れなので、GeodeLXというのは、Pentium世代(ソケット互換でいえば486)のCPUアーキテクチャが2005年の製品としてリリースされちゃったような代物。しかも、2016年に至ってもまだ現行製品で、Atomよりさらに下の低性能低消費電力なx86 CPUとして売られているようだ。
で、隙間から隙間へと20年生き続けているのは面白いけれども、当然性能は辛い。2005年の発売時点で、Windows XPがギリで動作するくらいのものだった。XPもサービスパックが当たるたびに重くなったから、SP3にもなると実用が厳しいレベル。
内蔵グラフィックも、3Dとか全く考えてもいない。一応、XPの頃のウィンドウ描画レベルのアクセラレーションはしてると思うけれど……
ちなみに、製品名に入ってる「@0.9W」というのは、SoC全体の消費電力ではなく、CPUコアだけ。全体だと2.4W。
Linuxを入れるにも、Ubuntuなんかは64bitだけになったし、古い32bit版も物理アドレス拡張(PAE)対応が必要。GeodeLXは、32bitかつPAEに対応しない。
Unix系OSに詳しい人だとNetBSDがいいらしいが、私にはどうも手にあまる。
Ubuntuベースに軽量化したlinuxBeanは、32bit版がありPAEなしにも対応するので、今回はこれで。
常識的な手順としては、
となるのだが、BIOSを呼び出せない。コンパクトフラッシュを挿してあると、USBを無視してそちらから起動しようとしてしまう。
よって、今回取った手順は以下。
これで大丈夫だった。
ただ、キーボード・マウス・USBメモリー・カードリーダーで4ついるので、隣のポートを潰してしまうようなうすらでかいカードリーダーなどは使えない。
どうもGeodeLXの内蔵グラフィックをちゃんと使えないようで、vesa互換ドライバーで動いていた。
/etc/X11/xorg.confをいじって、vesaをgeodeに変えてみたりしたが、そうするとXが起動しなくなる。Ubuntu 9くらいの頃はgeodeドライバーが使えていたらしいが、今はダメなようだ。
解像度が1024×768 / 800×600 / 640×480の3つしか選べないのが苦しいが、そもそもGeodeLXなんかウィンドウシステムで使うなという話かもしれない。
xrandrで無理やり1920×1080など追加できないかと思ったが、1024×768が最大だと固定されているようでダメ。1024×576としてアスペクト比だけ合わせることはできるかもしれないが、そこまでせんでも感はある。
遅いのはわかっているが、まあ、思ったよりはマシかもしれない。プリインストールのOperaでブラウジングするのもギリ可能。
メモリーは512MBで、インストール直後のlinuxBeanだと200MBも使っていないから、余裕あるくらい。
GeodeLXでさえこれくらいの使用感になるなら、Atom 230とかC-50 APUとか、あるいはPentium MみたいなWindows 7も苦しい端末に入れるのはいいかもしれない。
何しろこのスペックとなると色々難しい。
LANも100Mbpsだからローカルサーバーにするにも力弱い。となると、ウェブサーバーのようなものだろうか。
まあ、これから考える。
当然これをクライアントとして活用する気はないけれど、私のスキルレベルだとGUIとブラウザーがないと作業もままならないので。
linuxBeanで標準で入ってくるブラウザはOperaだったが、本当にギリという感じで。
また、Dilloという軽量ブラウザも入っていたが、これはちょっと今日日のHTMLにまともに対応できていないようで、特に凝ったことをしているように見えないサイトですら開けないくらいで。
試して好ましく感じられたのはMidori。Yahoo!Japanが問題なく開ける程度にはHTMLを読めるし、速度的にもまずまず。
とりあえずSamba入れてWindowsとファイル共有。
linuxBeanなら、GUIでちょいちょいと設定できる。
d.netのパーソナルプロキシというものがある。
社内LANのファイアウォールを超えられないといった環境でどうにかするためだとか(d.netが流行っていた2000年前後には、社内PCに勝手にインストールして暗号解読してる人がけっこう居た)、ダイヤルアップで頻々と回線切ったり繋いだりしたくないからパケットを食いだめしておくとか、そういった用途に使っていたらしい。
とりあえず個人レベルでは、こまめにアクセスする設定にしてもサーバー負荷を気にしないでいいことと、自宅に複数台クライアントがあるときに処理能力の総計を見られる、といったメリットは一応ある、のかな。